【新車&NEWS】トヨタ ヤリス クロス
クロスオーバー時代をさらに一歩進める

 ここにきてますます多い販売実績を見せるヤリスに、都市型コンパクトSUV「ヤリス クロス」が追加された。ヤリスで定評のあった軽快な走り、先進の安全・安心技術、低燃費などを受け継ぐ。さらにドライバーの個性やライフスタイルをリスペクトしつつ、SUVならではの力強さと存在感、ユーティリティにも配慮を欠かさない。

はやりのクロスオーバーだけど一味違う

 まずエクステリア。こちらはほどよく個性的だ。デザインキーワードは「ENERGETIC SMART」。野性味と洗練さのグッドバランスを狙う。フロントは、センターとロアとフェンダーからなる立体構造。C-HRほどではないが、精悍で目立つ。サイドは、フロントからリアコンビネーションランプまで一気に走り抜け跳ね上がる水平基調のラインがSUVらしさをアピールする。リアは、スクエア形状の中央部と大きく開口するバックドアが機能性の高さを訴求する。フロント同様、大きく張り出したオーバーフェンダーも力強さを感じさせる。
 インテリアに目を移すと、センターコンソールからディスプレイオーディオへの縦方向の流れに気づく。TFTカラー液晶マルチインフォメーションディスプレイに加えて、ディスプレイオーディオの上部配置やヘッドアップディスプレイの採用で、ドライバーの視線移動を最小限に抑えて運転に集中させる。
パネル上部には、スプラッシュ成形によるソフトパッドを使用し、温かみのある新素材フェルトをドアトリムに広く採用する。リアシートは比較的珍しい4:2:4分割式だ。また、6:4分割のアジャスタブルデッキボードを、トヨタのコンパクトSUVとしては初めて採用した。リアバンパー下に足を出し入れするだけでバックドアの開閉ができるメカニズムには今や驚かないが、その開閉時間がこれまでの半分になったと聞けば興味を惹かれる。

優れた4WDシステム、オプションで約23万円

 プラットフォームはヤリスと同じでコンパクト向けTNGA(Toyota New Global Architecture)を選択(GA-B)。サスペンションの一新と合わせて、ヤリスのこだわりである軽快なハンドリングと上質な乗り心地を手に入れたという。
パワートレーンは1.5リットル直列3気筒ガソリン(88kW)とそれをベースにしたハイブリッド(エンジン=67kW 前モーター=59kW、後ろモーター=3.9kW)。駆動方式は、FFと4WDだ。
 この4WDは「E-Four」と呼ばれる最新の電気式4輪駆動でハイブリッド用。たしかRAV4に採用されたのが最初で、トヨタの。長距離の使用が多いドライバーやスポーティな走りを好む人には最適なシステムだ。FFから4WDまで自動的に制御し、安定した操縦性・走行の安定性や燃費の向上に寄与する。トルク配分は、発進時は常に前輪8:後輪2、坂路を検知するとさらに必要な分だけ自動的に後輪のトルクを上げる。(最大 前輪4:後輪6)。このシステムは23万1000円でFFハイブリッドにも付けられる。
 ガソリン車の4WDはダイナミックトルクコントロール式。MUD&SAND、NORMAL、ROCK&DIRTの3種類のモードを選べる「マルチテレインセレクト」が搭載される。

多くの人に乗ってもらうからこそ安全は最高水準

 安全・安心技術に関しては、最新の予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」を標準装備(X “Bパッケージ”を除く)している。速追従機能付のレーダークルーズコントロール、アダプティブハイビームシステムをはじめほぼフルスペックだ。
 「最新技術を数多く搭載しているのは利用者の多いコンパクトクラスだからこそだ」とトヨタは言う。歩行者検知(昼夜)および自転車運転者検知(昼)を行う「プリクラッシュセーフティ」、検知対象とし、万が一の交差点事故への対応範囲を拡大しているのはありがたい。同様なことは右折時の直進対向車に対する配慮にも表れる。まあ、直進車があると止まるのは最近増えたが、曲がった後に歩道の歩行者まで検知するのは少ない。
 前方に対象物があるのに停車や徐行状態からアクセルペダルが必要以上に強く踏み込まれた場合、エンジン出力を抑制または弱いブレーキをかけることで加速を抑制し、衝突回避または被害軽減をサポートする「低速時加速抑制機能」、自車線内の歩行者と衝突する可能性が高く、自車線内に回避するための十分なスペースがあるとシステムが判断した場合、ドライバーの回避操舵をきっかけに車線内で操舵をアシストし、車両安定性確保と車線逸脱抑制に寄与する「緊急時操舵支援機能」、高速走行中の強い横風を検知して作動して車線からの逸脱を抑制し、安全な走行をサポートする横風対応制御付きの「S-VSC」も搭載(トヨタ初)する。
 高度運転支援「トヨタチームメイト(アドバンストパーク)」もヤリスに続き採用する。オプション設定だが、オートパーキングも進化した。アクセル、ブレーキ、操舵を自動的にコントロールする。案内に従ったシフト操作のみで駐車が完了。カメラと超音波センサーによって周辺を監視し、障害物などを検知した場合は警報とブレーキ制御で接触回避を支援。さらに、事前に駐車位置を登録することで、白線のない駐車場での使うこともできる。
 消費税込み小売価格は、179万8000円(X BパッケージFF)〜281万5000円(ハイブリッドZ E-Four)。
 ヤリス・ファミリーは、この2月に発売されたヤリスと、そしてヤリス クロス(8月31日発表)と、その後に正式に発表された(9月4日)超スポーツモデルGRヤリスと、それぞれ性格の違う3モデルで鉄壁の構成を誇る。他社にとっても手堅いライバル・シリーとなるのは間違いない。

報告:神谷龍彦
写真:トヨタ自動車

3ナンバーの枠にぴったり収まっていたヤリスよりも全長240mm、全幅70mm、全高90mm大きい。

前後ともほどよく個性的であると同時に、SUVらしい力強さをアピールする。ウマい!

エクステリアに比べると、インテリアのデザインは大人しい。ただ、素材感・質感は高い。

右折時に対向車があると止まるのはよくあるが、右折後の横断歩道の歩行者まで検知するのは親切。

ヴィッツ改めヤリス。2月の発売以降、よく売れた。クロスとGRの追加は強力な追い風だ。

1.6リットル直3ターボ(200kW)を搭載するGR。1.5リットルバージョン(88kW)もある。


最終更新日:2020/09/13