【新車&NEWS】日産 フェアレディZプロトタイプ
やっぱりスポーツカーの復活祭は楽しい

 プロトタイプという名こそ付いているが、限りなく市販モデルに近いようだ。内田 誠CEOは言う。「単なるコンセプトカーではない。デザインはほぼ完成している」と。7代目フェアレディZはおそらくこんなデザインになる。言ってみれば原点回帰。エンジンはV6ツインターボエンジン(3リットル?)、トランスミッションはこれも昔懐かしい6速マニュアルである。展示車のボディカラーはイエロー。初代(S30)にも300ZX(Z32)にもあった色だが、そのどれよりも艶やかだという。

個人的に昔ばなしをしたくなりまして

ロングノーズショートデッキの、ひところ流行った典型的なスポーツカーライクなボディは全長×全幅×全高=4382×1850×1310mm。現行Z34と比べると全長が約130mm長いが他のサイズはほぼ変わらない。初代(S30)と比べると全長も全幅も約200mmも大きい。このあたりは時代を感じさせる。
 フェアレディに代わってフェアレディZがデビューしたのは1969年の10月のこと。この年の2月には同じ2リットル直列6気筒DOHCエンジンを搭載したスカイラインGT-Rが一足早く登場してサーキットを荒らしまわっていた。
 フェアレディZの最スポーティバージョンは「432」と呼ばれた。4は4バルブ、3は3キャブ(ソレックス)、2は2カムを表す。今のように電子式インジェクターではなく物理的なキャブレターだったから始動はやや神経質だった。ただ、この時代、困難は時にステータスにつながることもあった。ダッシュボード上とセンターコンソールには3連メーターがスポーツ心を刺激した。
 Z432の最高速度は210km/h、ゼロヨン加速は15.8秒。数字だけ見ると驚かないが、Zは国産車で初めて200km/hを超え、0-100km/h加速16秒を切ったモデルだった。最高出力は160馬力(現在のネット値の方が実際の出力に近い)。今からみれば刺激的ではないが、当時としては立派なデータだった。プアマンズ・ポルシェとも呼ばれこともあったが、とくにアメリカでは大人気を博した。S30は世界で約55万台(日本では約8万台)売れた。この7月に逝去されたRJCの松尾良彦会員(デザイン担当だった)アメリカのZクラブの招待で毎年のようにUSAに足を運んでいた。

ビッグヒット作の再来にはレジェンドを大切にする

 さてZプロトタイプ。エクステリアデザインは初代フェアレディZのシルエットやフロントおよびリアのアイコニックなモチーフを引き継いでいる。スクエアなラジエーターグリルやボンネットのパワーバルジ、ティアドロップ形状のLEDヘッドランプも、初代を彷彿させる意匠となっている。
 大きく開いたグリルの内部の上部には4段重ねの四角形が6並ぶ。これは初代に対するオマージュのひとつ。開口部が大きすぎるという声も聴かれたが、グリル下部にナンバープレートを付ければデザイン的には落ち着くだろう。
 サイドビューは長いフロントノーズ(S30には240ZGと呼ばれるロングモデルも追加された)、垂直に切り立ったテールエンド、フロントフェンダーよりもわずかに低く、なだらかに傾斜するリアまわりの意匠によってS30に通じるシルエットを表現。
 リアのデザインは、S30やZ32などのテールランプをモチーフにアレンジしたもの。同時にレイヤー形状に光り輝く先進的なLED光を演出に使う。左右に配されたマフラーとともに存在感を強調している。サイドシルやリアバンパー、フロントバンパー下のチンスポイラーはカーボン成形。このあたり、デザインと機能をうまく融合させている。
 インテリアでは、オーセンティックなイメージと最新技術の融合を追求。メーターパネルには12.3インチのフルデジタルディスプレイを採用した。エンジン回転計の針が真上を示すと同時に、シフトアップインジケーターが点滅しドライバーにシフトアップを促す。短いシフトレバーを駆使するのはいかにも楽しそうだ。3連メーターもほぼS30と同じ位置に配されている。
 その他の計器類も一目でクルマの状態がわかるようなデザインだ。インテリア各部のステッチや、シート中央部に施されたグラデーション状のストライプ模様など、ボディカラーと合わせたイエローのアクセントがいたるところに取り入れられている。さらに展示車はBOSEのスピーカーが装備されていた。タイヤ&ホイールは前後で異サイズの19インチ。これも新しい力強さの表現。
 日産は2021年末までに12の新型車を投入すると言う。この後も続々とニューモデルが登場するわけだが、このZからプロトタイプの文字が消えるのはいつ頃だろうか? おそらく21年の末頃になるのではないか。その時のプライスタッグには400万円後半か500万円台の数字が刻まれていると思う。

報告:神谷龍彦
写真:日産自動車

サイドシルやリアバンパー、フロントのチンスポイラーはカーボン成形。素材の新しさも7代目の特徴。

ロングノーズ、ショートデッキの懐かしいフォルム。タイヤは19インチ。前255/40、後285/35.

リアランプにはS30やZ32のモチーフを採用。左右の刀状のデザインが新鮮。リアゲートにはS30を意識。

目の位置からは目立たないが、上から見るとボンネットに初代同様の膨らみがあることがわかる。

世界同時発表だからか、左ハンドル。S30同様、上下に二つの3連メーター。シフトレバーは短い。

フロントグリルの中には4段重ねのスクエアが6個並ぶ。ナンバープレート装着で印象は自然になる。

これは初代フェアレディZの最スポーティバージョン「432」のエンブレム。プロトタイプと同じ書体。


最終更新日:2020/09/19