三菱FUSOキャンター 2016モデル

快適キャビン、イージードライブ、燃費性能の向上を


 キャンターは2010年10月の発表発売で約5年半、その間に競合他社の追い上げで国内トップだった燃費もわずかながら抜かれる状況も出てきていた。そこで、今回マイナーチェンジではあるが、かなり大幅な改良を加えて2016年モデルとして新登場した。キャンターといえばハイブリッド車もあり、そのハイブリッドシステム「ハイブリッド用モーター内蔵デュアルクラッチ式トランスミッション」が2013年次RJCカーオブザイヤー特別賞に選ばれているので、商用車ではあるが我々にもなじみ深い。
 今回のマイナーチェンジに当たっては①快適なキャビン、②イージードライブ、③クラストップの低燃費、の3項目に重点を置いて改良がなされたという。

①快適なキャビン
 自家用乗用車と比べるとプロのドライバーが仕事として使うトラックは、1日の大半をそのキャビンで過ごす。ある調査では運転時間5時間40分、その他休憩等も入れると1日8時間以上もキャビンで過ごすことになるという。そのような空間であるからドライバーにとって第2のリビングルームとして、リラックスできる快適なキャビンにすることを目指したという。そのため、室内はブラックとシルバーを基調とした落ち着きのあるラグジュアリーな内装とすることで、快適な居住環境を作り出している。ドライバーズシートはサイドサポートを採用するなどホールド性を向上するとともに、座面クッションを拡大し疲れにくくしている。室内の収納スペースも拡大し、オーバーヘッドシェルフ、フロアコンソール、センタートレイ&マガジンラックなど従来CUSTOM仕様に採用されていた収納設備を標準装備とした。室内での作業性の向上とともに使い勝手のよい居住空間を実現している。

②イージードライブ
 キャンターのトランスミッションには5速マニュアル、6速DUONIC(デュオニック)、そしてそのDUONICをベースにモーターを内蔵したハイブリッドがある。このうち主流はやはりDUONICで、これはデュアルクラッチ式AMT(Automated Manual Transmission)である。そしてこのDUONICは2015年9月よりデュアルクラッチの改良を行なった「DUONIC 2.0」が搭載され、これにより操作性、快適性、信頼性が向上し、シフトショックも大幅に低減している。また、新採用したものとして坂道発進時のずり下がりを防ぐ「ヒルスタートアシスト機能」がある。これはブレーキペダルから足を離しアクセルペダルを踏むまでの間、ブレーキ力を保持するもので、乗用車では普及が進んでいる機能だ。インストルメントパネルはデザインが一新されただけでなく、メーター類の視認性や操作ボタンの操作性の向上も図られ、イージードライブに貢献している。

③低燃費
 エンジンは直列4気筒3.0Lのインタークーラーターボ付きディーゼルエンジンで、仕様により81kW(110PS)から129kW(175PS)まで4段階の出力のエンジンがある。排ガスに関してはPMに対してはDPF、NOxに対しては尿素SCRを採用している。今回のチェンジでエンジンは主にソフトウエアを改良することで燃費の向上を図っている。また、エンジンだけでなく、駆動系や空力など細かなところのチューニングを進め、従来比で7%の燃費低減を実現している。ちなみにアイドリングストップ付き2トン積み車で、11.6km/ℓを達成しクラストップの低燃費としている。

 なお、キャンター発表会では、物流企業の数の増加、燃料価格の激しい変動等の背景からTOC(総所有コスト)の継続的な改善が重要であるとの見解が述べられた。さらに、将来展望の電動化への取り組みとして、100%電気駆動であるバッテリーEVとしての「キャンターE-CELL」の開発と、そのポルトガルでの実証実験(終了)、ドイツでの実証実験(開始)の報告もあった。

キャンター2016モデル。低燃費化が図られるとともに、ドライバーが多くの時間を過ごすキャビンの快適化と疲労の軽減が図られている。

広々としたラグジュアリーなキャビン。運転席にはサイドサポートを設け座面クッションも拡大、疲れにくく快適な運転環境を作り出している。

ブラックとシルバーを基調としたインストルメントパネル。メーターの視認性や各ボタンの操作性を向上している。ダッシュはあえてフタを設けず扱いやすくしている。

デュアルクラッチ式AMTの「DUONIC 2.0」。基本構造は伝達効率の高いMTで、2つ設けたクラッチを自動で操作することによりシフトを行なう。DUONIC 2.0のデュアルクラッチ部分のカット写真。アウターとインナーの多板クラッチはそれぞれ奇数段と偶数段のギヤを受け持つ。

4P10型直4ディーゼルエンジン。総排気量2998ccのインタークーラーターボ。エンジンコントロールソフトの改良など細かなチューニングで燃費を向上。

NOxに対してはアドブルー(尿素水)による尿素SCR(NOx還元触媒)で確実な低減処理を行なっている。写真はその尿素噴射のイメージ。

報告:飯塚昭三
写真:三菱ふそうトラック・バス


最終更新日:2016/04/30