キャデラック CT6

変わるキャデラック、旗艦登場 その名はCT6


 テールフィン全盛期の60スペシャル、’80年代のフリートウッド・ブルーアム、世紀を跨いでのFWDドヴィル……。キャデラックと言えばいつの時代も圧倒的なサイズと目映いばかりの華麗さでダントツのプレゼンスを誇った。アメリカン・ラクシュリーの象徴として。それがここ10余年というもの、RWD回帰に伴う繁忙の中で金看板のフルサイズモデルが置き去りにされたままだった。
 アジアの巨大市場に目を奪われ、去る者がいれば戦略を練り直す者もいる。ゼネラルモーターズ・ジャパンが4月26日、ホテルを舞台に華々しく催した新フラッグシップ投入の発表会は冒頭、自らを「ニッチな存在」と呼んで始まった。ブランド創成から今年で114年になる誇り高いメーカーのこと、むろんここは単なる謙遜ではなく、むしろ満々たる自信が込められている。ドイツ車席巻の中、歴代のキャデラックを終始貫いてきた「アート&サイエンス、つまり常に最新技術を美しい形とともにというコンセプトが生かされたこのクルマはそれらとは違う特別な存在というわけだ。

全長5.2mで1659kgから。ビッグでライト


 これまでセルフスターターの発明を始めとする数々の「世界初」を編み出してきたキャデラックが今回このクルマに投じた「サイエンス」の筆頭格が超軽量設計だ。なにしろホイールベース3110mm、全長5190×全幅1885×全高1495mmの堂々たる体躯でありながらベース仕様では実に車重1.7トンを切る軽さだからである。9月に販売開始予定の日本仕様にはトップグレードの“プラチナム”が充てられるが、それでもメルセデスのSクラスやBMWの 7シリーズを確実に下回る1920kgを実現した。
 元来キャデラックは’90年代のセヴィル当時から高張力鋼板をハイドロフォーミング加工するなどして剛性と軽量化の両立に熱心だったが、今回は新たに“オメガ・アーキテクチャー”と呼ばれることになった骨格の多くに多様な高圧鋳造アルミ合金素材を駆使した結果だ。 これを引っ張るエンジンは8ATおよびオンデマンド式のAWDと組み合わされた3.6ℓV6の340PS、386Nmと数値自体はさほど目覚ましいものではないが、
 まさにその軽量さゆえに、かつて抱かれたイメージとは逆にダイナミックな運動性能を発揮するという。サスペンションは前後ともマルチリンク式。タイアも245/40R20 95Wの豪華さだ。価格は8%の消費税込みで998万円。

CT6の「アート」。縦に並んだLEDの放列はエスカレードなどとも共通する。伸びやかなサイドビューでサイズ感が分かろう。

Apple CarPlayや34個のスピーカーを備えたBOSE PANARAYオーディオシステム、リアシートのマッサージ機能などが満載される。

CT6の「サイエンス」。アルミ-スチールの混成もさることながらフープやストラット、ハニカム状等々、ユニークな構造物が看て取れよう。

報告:道田宣和
写真:ゼネラルモーターズ


最終更新日:2016/04/30