ノートに電動パワートレイン「e‐POWER」 追加

 話を聞いたときは大したモノじゃないと思った。ちょっとだけ新しさを加えたハイブリッドカーだろうと。広報の人は「そんなことありません!」と不本意そうに言ったけど。
 そんな経過があって発表日の10月2日を迎えた。会場の日産本社、1階でクルマを覆っていた幕が下ろされた。その下から出現したのは少しだけデザインが変わったノートである。 まあ、マイチェン程度だなと軽く受け止めた。しかし、驚いたのはここからだ。
 正式名称は「ノート e-POWER」。で、問題はe-POWERだ。eが付くから電気=モーターを利用していることは容易に想像がつく。エンジンとモーターがあるから、HVであることも間違いない。が、駆動はすべてリーフと同じ大出力モーター(95馬力)だけが担当する。エンジンは駆動に関係しない。完全な電気自動車である。
 ところが、外部から充電する必要はない。搭載するガソリンエンジン(1.2リッター)にすべて任される。このエンジンは充電専用だ。エンジン横に電動モーターとインバーターが繋がり、ここで発進時や加速時、さらには回生充電をコントロールする。
 もう少し具体的に言うと、駆動用バッテリーの残量が十分なときはエンジンを切りバッテリーで走行、残量が少ないときはエンジンを効率的に駆動して充電しつつ走行、加速時などには発電機とバッテリーから最大限の電力を供給、そして減速時などにはエンジンをOFFにして回生充電をする。
 エンジンは走行とは関係ないから、常にいちばん燃費の良い回転数(2000〜2500回転)を充電用に活用できる。だから騒音も少ない。日産が「新しいパワートレイン」と呼ぶ所以である。
 日産はこの開発に10年かけたという。その線上にリーフがあった。しかし、このリーフの販売台数、思うように伸びない。走行距離が少ないせいもあるだろう。インフラの遅れもあるかもしれない。その間にトヨタのハイブリッドは着々と勢力圏を広げた。
 e-POWERの開発にはリーフで得たノウハウが活かされているという。システム自体をコンパクトにできた。高電圧バッテリーはフロントシートの下に積む。12Vバッテリーはトランクに追いやっている。
 発表会のあと10分ほど試乗する機会があった。モーターだから言うまでもなく発進加速はいい。しかもスムーズだ。e-POWER Driveというモードがある。これはBMW「i3」のようにアクセルワークによってブレーキをコントロールするものだ。ノーマル、S、ECOの3モード用意されており、i3では減速がやや急激過ぎるきらいがあったが、ノートは違和感が少なかった。ちなみにノーマルだと加減速は通常通り、Sでは加速も減速も強くなるが、ECOでは加速が穏やかになり減速は強くなる。SやECOになれると市街地でのブレーキ回数は約7割に減ると言う。
 もうひとつ気付いたのは走行中に勝手にエンジンがかかること。バッテリーの充電だ。アクセルやブレーキのペダルワークとはまったく関係なしに、だ。約2000回転程度だからさして気にはならない。ロードノイズや風切り音が出る高速道路では無視できるだろう。
 リチウムイオン電池の画期的改良で走行距離が飛躍的に伸びない限りe-POWERの存在意義は大きい。気になる燃費は37.2km/ℓ。だがこれはエアコンなしの簡略装備車のデータ。エアコン装着車は34.0km/ℓとなる。価格は177.2万円〜224.4240万円。駆動方式はFFのみだ。日産ではできるだけ価格を抑えてe-POWERを広げてゆきたいという。少し明るい未来が見えた気がする。

報告:神谷龍彦
撮影:怒谷彰久

グリルからのV字ラインが強調された。グリル周りのブルーはe-POWERの証し。

ボディサイドとリアにe-POWERのエンブレム。ヘッドランプの形状も少し変わった。

レッドやオレンジなど5色の新色が加わり計13のボディカラーが設定された。

エンジンがあるのがEVとの違い、エンジンが駆動タイヤと繋がっていないのがHVとの違い。

エンジンで発電しインバーターでコントロール。満タンにすれば1000キロくらいは無給油で走れる。

全車D型ハンドルに。精度の上がったスマート・ルームミラーはメーカーオプション設定が多い。


最終更新日:2016/11/04