トヨタ Toyota
カムリ CAMRY
あえてセダンをアピール。日本人にも届くか。

 インテリア──視覚的にはメーターパネル左からシフトレバーの左まで大胆に走る太いラインが目立つ。しかもダッシュボードは基本的にフラッシュサーフェス。余分なスイッチ類はほとんどない。トヨタ独自のデザインだ。
 走り出すと、インパネ上端もステアリング上部も低いことに気づく。細めのAピラーもありがたい。何よりもまず視界がいい。走りはほぼ予想通り。EV走行時だけでなく全体に静かで穏やか。操舵感もシフトレバーの位置も自然だ。と言っても、発表会のあとで急コーナーの多い短い試乗コースにトライしただけだから断定はできない。
 全長4885㎜、全幅1840㎜、全高1445㎜、別に横から見なくても間違いなく低い。先代比で車高は25㎜、エンジンフードは40㎜も下がっている。サイドビューやリアビューは確かにカッコいい。でもフロントグリル(キーンルック)は意見の分かれるところだろう。最近のトヨタ顔の延長線上でさらにアクを増した。個人的にはやりすぎだと思うが。
 かなり低い位置にLEDのフォグランプが控えめに顔を出す。ヘッドランプもLEDでオートレベリング機能付き。一つのLEDで遠目、近目に対応する。LEDの採用でヘッドランプデザインはどこもずいぶん自由になった。
 こうした内外装の低い処理が可能になったのはTNGA(Toyota New Global Architecture)に負うところが大きい。これは、プラットフォームやパワーユニットを含めたトヨタ車の大構造改革だ。TNGA自体はプリウスから商品化されたが、カムリではさらに進化した。極端に言えばすべてが新しい。開発陣が過去に縛られず「ゼロから作りあげた!」と胸を張る所以だ。

33.4km/ℓの好燃費。セーフティ機能もさらに進化。
 パワーユニットは新開発の2.5ℓ直4エンジン(131kW/178ps)と高回転モーター(88Nm)。システム最高出力は155kW/211ps。このエンジンの最高熱効率は41%と高い。また、バッテリーの冷却システムをコンパクト化しリアシート下に配した。その結果、ラゲッジスペースの拡大はもちろん、低重心化や操縦安定性も向上した。
 JC08モード燃費は33.4〜28.4km/ℓ。先代のハイブリッドが25.4km/ℓだからこの数値は立派だ。ちなみにトランスミッションは、Sモードにシフトすれば6速マニュアル感覚のシフトもできるシーケンシャル・シフトマチックである。
 セーフティ機能で目新しいのは「Toyota Safety Sense P」の標準装備 と「リアクロストラフィック・オートブレーキ機能」。
 Toyota Safety Sense Pの中核はプリクラッシュセーフティだろう。これは前方のクルマや歩行者を検知しブザーなどでその存在を知らせる。ドライバーが反応しなければブレーキをかける。作動速度は歩行者の場合は10〜80km/hだ。
 リアクロストラフィック・オートブレーキは駐車場で後退するときに、左右から接近するクルマがあれば自動的にブレーキをかける機能である。
 トヨタはニュー・カムリをビューティフル・モンスターと呼び「セダンの復権」をアピールする。80年代の熱いドライブを求める人をユーザー。50代、できれば若い人も……と。そう言えばあのころトヨタは「GTアゲイン」というキャンペーンを張った。その心は今回と似たようなものだ。しかし、時代はさらにセダンにとって厳しい。
 日本での月販目標は2400台、カムリの“本場”アメリカでは月に3万台以上売れているという。流れに竿さす勇気はいいが、果たして結果は? ジャーマン・セダンに流れがちな日本のユーザーをグッグと振り向かせることはできるだろうか。価格とクオリティでは決して負けていない。売れるといいね、ターゲットユーザーとほぼ同じ世代のぼくはそう思う。
グレードはX(税込み価格:329万4000円)、G(349万9200円)、Gレザーパッケージ(419万5800円)。

報告:神谷龍彦
写真:植木 豊 トヨタ自動車

低くスタイリッシュなエクステリア。サイドのプレスラインにはずいぶん苦労したらしい。ルーフを後ろに伸ばして室内空間を確保した。

先代と似たイメージのフロントグリル。バッテリーを小型化して後席の下に配置したためラゲッジルームは524ℓ。トランク開口部も広い。

低いダッシュボードのおかげで視界はいい。ナビ・マップの自動更新をするTコネクトがGレザーパッケージのみ標準というのはちょっと。

素材のクオリティもインパネの質感も相当高い。そしてなによりこのデザイン。フラッシュサーフェスですっきりしている。グローバルだ!

現時点では日本仕様のパワーユニットはハイブリッドのみ。それにしても33.4km/ℓという燃費はすごい。先代比で3割以上のアップだ。

TNGAを筆頭にほとんどがゼロからの挑戦。稀有なことだ。カンパニー制で自由度も増した。開発陣の意気込みは否が応でも高くなる。


最終更新日:2017/07/13