先代に比べると内外ともまったく新しいデザインになった。共通点はない。
まずエクステリア。先代よりも全体としては角っぽいが、どのエッジからもシャープさが消えた。優しい。それなのに力強く見えるのはボンネットの高さによるところが大きい。ルーフは4cm下がったのに最低地上高は15㎜増えている。押し出しはずっと強くなった。このあたりがクロスオーバーっぽい印象を与えるのだろう。各部のデザインそのものはまったく異なるが、スズキのイグニスにも似る。
もちろん、C4カクタス譲りの黒いエアバンプも大きな特徴だ。このポリウレタン製のプロテクターは小さな接触からドアを守る。手で押すとわずかにへこむ。多少傷つけてもこのバンプだけ換えればいい。こうした実用パーツをデザインの中で消化したのは上手い。ブラックのホイールアーチもそうした効果の一翼を担う。
3サイズは3995㎜、1750㎜、1495㎜。最近のクルマのなかでは扱いやすいサイズだ。全長は4ⅿを越えないというBクラスらしいポリシーも維持している。20㎜広がった全幅はほぼそのまま室内幅の増加に使われる。
カラーリングでもカジュアルさを訴える。ボディカラーは7色。これにルーフやドアミラー、フォグランプトリムに白・赤・黒の3つのカラーのうちどれかが組み合わされる。異様にフロントのガラス部が後ろに広かったゼニスフロントウインドーはやめて、パノラミックガラスルーフ(オプション)を採用した。これもまた明るい車内を演出する。
次にインテリア。ずいぶんすっきりした。基本的にはフラットにこだわる。デザインのモチーフは角の丸くなった四角形。エアの吹き出し口や、インパネ上部のふちどり、ステアリングホイールのスイッチのまとめ方などに活きる。ナビ(オプション)などを表示する7インチ・タッチスクリーンは自然に手の届くに位置にある。嫌味のない現代化だ。
注目したい装備にコネクテッドカムがある。GPS機能や16GBのメモリーを内蔵したシステムで、オンボードカメラをフロントウインドーから前方に向けて設置する。本体のスイッチを押せば、カメラにもムービー(20〜60秒)にも記録できる。SNSにアップすることだってできるのだ。事故などの際は衝撃の前30秒、衝撃後60秒を自動的に記録する。ただ残念なのはこのシステム、上級グレード(SHINE)にのみ標準装備であること。
エンジンは3年連続でエンジン・オブ・ザイヤー(1.0〜1.4ℓ)に輝いた1.2ℓ3気筒ターボ。81kW(110ps)を発揮する。自然吸気の1.6ℓ4気筒に比べると軽量化とともに21%の燃費節約も手に入れた。 取り立ててスポーティなエンジンではないが、音振の少なさや自然なパワー感に誰もが好感を持つはずだ。トランスミッションはこれまでのEAT5からアイシンAWとの共同開発のEAT6に変わった。
グレードはFEEL(税込み216万円)とSHINE(239万円)だが、ともにデリバリーは9月以降になる。そんなに待てないよ!という人は7月にデリバリーされるSHINE Debut Edition(226万円)を狙う手がある。ただし、こちらは200台の限定販売。とりあえず何台かをカスタマーのお手元に──最近の輸入車はこういう売り方が多いね。
報告:神谷龍彦
写真:佐久間健
SUV風な雰囲気。実際、最低地上高は先代より高い。ボンネット部が高いのも影響している。
Aピラーやエアバンプ、そしてホイールアーチなど、ブラックが目立つサイドビュー。新鮮だ。
ダブルシェブロンの左右いっぱいに、上にデイタイムランニングランプ、その下に2分割のヘッドランプを配する。ボディと同色の大型バンパーもボンネットを実際以上に高く見せる効果あり。
先代は多少ゴチャゴチャしていたが今回はすっきり。デザインモチーフは角の丸い四角形。
バックミラーの前に取り付けられたHDカメラ。下側のスイッチを押せばいつでも撮影可能。
このエンジンは一般的な意味で素晴らしい。滑らかで、軽やかで、かなり小気味いい。