BMW X3
SUVよりSAVの方がスポーティ?

 いつの間にか日本でも完全に定着してしまった「SUV」(スポーツ用多目的車)というネーミング。ただBMWのクロンシュナーブル社長は「うちはSUVではなくてSAVですからね」と穏やかに言う。
 BMWがこの種のクルマをSUVではなく「SAV」と呼ぶのは周知の事実。問題は真ん中が「U」か「A」かの違いだけだ。メーカーの好み(SUVの呼称はアメリカ生まれ)の問題程度に捉えていたが、どうもそれだけではないらしい。
 Uはユーティリティで、Aはアクティビティだから、SUVは使い勝手重視、SAVは活動・走り重視ということになる。かといってSUVとSAVの間に大きな違いがあるかというと、ない。ただ、それだけSAVの方が走りを重視しているとは言えるかもしれない。だがら、前後重量配分が50:50であるとか、空気抵抗係数が0.29であるとかをBMWはアピールするのだろう。
 それはさておき、BMWは相変わらず好調だ。昨年はMINIと合わせて7万5千台以上を販売した。今年も1〜9月の前年比はBMWが+3.2%、MINIが+4.5%。手堅い。「X3の登場でもっと売れるだろう」と自信を示す。むべなるかな。
ディーゼル・モデルはきっと乗りやすい、走りやすい
 今回でX3は3代目になる。エクステリアで大きく変わったのはグリル周りだ。比較写真をご覧いただければ分かるように、キドニーグリルは大きく、ヘッドランプは変形ヘキサゴン(六角形)になった。立体的な造形で、迫力が増したと言えば言えるけど、グリルはあまり腎臓肥大にしない方がいいと思う。
 サイドはキャラターラインが少し変わり(上部に2本)、フロント・フェンダーの下の方にエア・ブリーザーが装備された。デザイン上のポイントとなるだけでなく、実際に前からのエアがここを流れて抜けてゆく。リアビューにはとくに劇的な変化はないが、エキパイの左右2本出しはX3としては初めてだ。
 エンジンは4気筒2.0ℓターボのガソリンとディーゼル。パワーはガソリンが135kW(184馬力)、ディーゼルが140kW(190馬力)。それよりも注目すべきはトルクだ。ディーゼルは400Nmもある。しかもその発生回転数は1750〜2500rpm。これなら2135kgのボディも負担にはならないだろう。0-100km/h加速は8.0秒。びっくりするほど速くはないが、決して鈍足ではない。つまり必要十分。
 3サイズは4720×1890×1675mm。ホイールベースは2865mm。全幅を何とか1800mm台に収めたのは好感が持てる。Xファミリーの中での序列があるから自ずと寸法は制約されるんだろう。下克上はあまりしない方がいい。トランスミッションはガソリンもディーゼルも8速AT。駆動方式はxDrive(4WD)だ。
 インパネの細部はかなり変わったが、座っても違和感はまったくない。ドイツメーカーはこのあたりの対応が上手い。センターコンソールはBMWらしく3度ドライバーの方を向く。細かいところを省いていうと、HDナビゲーションなどのディスプレイ大きくなり位置が上になったのが目立つ。このほうが視線の動きが少なく、モニター自体も見やすい。
 セイフティ機能も充実している。というか、自動運転サポートも含めて、いまやこの点ではライバルにひけを取るわけにはいかない。最近増えたのは操舵に対する介入だ。できるだけレーンの中央を走るように、隣のクルマとの衝突を避けるように、死角にクルマがいるような場合に車線復帰するように──ステアリングを自動で操作する。
 基本グレードは、20i、20dともにスタンダード、xLine M Sportの3タイプ。納価格は639万円(xDrive 20i)から710万円(xDrive20d M Sport)。納車開始は12月から。ただし、xDrive 20iは来年の2月以降になる。
報告:神谷龍彦
写真:佐久間健 BMW Japan

グリルをどっと前面に出して、スポーティさを増したフロント。3代目のファッションは派手です。

変わったけど、変わった印象を与えないダッシュボード。ディスプレイの位置が少し上になった。

2.0ℓターボのガソリンとディーゼル。パワーはちょっと、トルクは圧倒的にディーゼル。

先代とのフロント比較。グリルだけでなく全体にスポーティさを増したニューフェイス。

あまり変わったとは思えないサイド。でも、前輪後ろのエア・ブリーザーは伊達じゃない。

すべてのグレードに採用されたツインテールパイプ。リアゲートの開閉はオートマチック。


最終更新日:2017/10/24