ダイハツ ミラ トコット
DAIHATSU MIRA TOCOT

女性の女性による女性のための軽自動車?

 一見ナンってことないモデルだ。でも、とってもまともにも見える。ダイハツの新軽自動車「トコット」、スズキのラパンに対抗するニューモデルである。
 若い女性をターゲットにしたと言う。女性による女性のための軽自動車。女性仕様車はこれまでいくつもあった。でも実際には、ある程度決まってから女性の意見を聞くケースがほとんど──参考までに。しかし、トコットは開発段階から女性がかかわった。それが新しい。発表会の壇上にはその7人(商品企画=3人、デザイン=3人、生産企画=1人)が登った。
 彼女たちを代表して西山枝里さんが少し胸を張って説明した。
 「自分たち(女性)が欲しいと思うクルマが見つからない。女性の感性の変化も初心者の運転に対する不安も分かっていない。そういうものを新型車に落とし込みたいと思いました。“盛る”という発想ではなく“素”の良さ、言葉を変えれば“シンプル”さ。そんなものをアピールしたいと。その結果出てきたのが“エフォートレス”──つまり肩ひじを張らずに自然体でいられるクルマということです」
 チーフエンジニアの中島雅之氏からはもう少しハード面の解説が入った。
 「まず安全・安心にこだわりました。自車の位置を上から確認できるパノラマモニター、前後のコーナリング・センサー、この両方を備えた軽自動車は初めてです。パワーステアリングも軽くしました(中央に戻る機能は強めにセット)。ドアミラーの位置はこれまでよりも低くしました。サイドエアバッグとサイドのカーテンエアバッグの全車標準装備も軽自動車初です。ヘッドクリアランスも広く取りました」。
 室内高はミライースよりも30mm高い。これなら黒柳徹子さんでも問題ないだろう。
 ココアも担当していたという中島さんは続ける。
 「次はエフォートレスです。それを象徴するのが“ほっとステアリング”、前後丸型のLEDランプ、陶器のような質感のインテリア、文字が大きくて見やすいメーター、ホールドを重視したフロント・セパレートシートなどです」
 ところで、エンジン関する説明は一切なかった。参考まで触れておくと、自然吸気のみでターボはない。直列3気筒で最高出力は38kW(52ps)。イースよりも少しパワフルだ。一時あれだけ話題になった燃費はもはや最重要項目ではないらしい。それでも29.8km/ℓ(2WD)というデータを誇る。もちろん4WDもある。
 若い女性を取り込もうというのはよくわかる。しかしほんとに若い女性だけでいいのか? 今や軽自動車はライフライン的存在だし、毎日乗るユーザーは75%もいるという。これからはさらに高齢のユーザーも増えるから結果的に万人向きだ。
 と、ここで効いてくるのが初心者にも優しいという方のコンセプトだ。エクステリアの角の取れたスクエアなデザインは、誰にとっても歓迎できる(好みの問題は別として)。あの比較的大きいレンジローバーだってスクエアなデザインだから運転しやすいのだ。
 トコットは基本的にスクエアだから前後の見切りがいい。車両感覚がつかみやすい。ベルトラインにカーブをつけず水平基調にしたことでバックの時の視界も悪くない。それでいて前後ランプには丸型を取り入れている。グッドバランスだ。
 ダッシュボードは同じく水平基調。メーターも文字が見やすい。ベーシックな部分はきっちりおさえている。質感も今や軽自動車でもあまり遜色はない。
 2WDモデルの価格は、L=107万4600円、L“SA鶚”=113万9400円、X“SA鶚”=122万0400円、G“SA鶚”=129万6000円。4WDは12万9600円高。トランスミッションは全車CVTだ。
報告:神谷龍彦
写真:佐久間健

手前からセラミックグリーン、ジューシーピンク、サニーデイブルー。すべて新色である。

中央が奥平総一郎社長、左端が西山枝里商品企画担当、そして企画にかかわった女性たち。

前後に丸型のLEDランプを採用。角のないスクエアデザインのためフロントの見切りはいい。

リアランプも丸型。2トーンのルーフにはキャンパス地調のアイボリー素材を取り入れた。

すっきりした印象のインパネ。中央のナビゲーションも見やすい。質感もけっこうある。


最終更新日:2018/06/27