日産 新型キックスのファーストインプレッション

市街地ではほとんど電気自動車感覚で走れる。発進加速や中間加速もモーターらしくリニアにトルクが立ち上がる。

口の字型の黒いグラフィックは、初代パトロール(大型クロカンSUV)のスペアタイヤからインスパイアされているという。

1.4Lの直3エンジンで発電し、モーターで駆動するe-POWERは第3世代に。e-4ORCEではリアにもモーターを搭載する。


インテリアの質感も向上。12.3インチのデュアルディスプレイはオプション。ATセレクターははインパネ下側のボタン式。

Xのシート地はトリコットだが、座感やサポート性は悪くない。リアシートもヘッド&フットスペースとも十分にある。

上級グレードのGは19インチのタイヤ&ホイールやグロスバンパーなどを装備するが、Xと外観上の大きな違いはない。


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 世界的なSUVブームが続く中、日本においてもSUVは登録車市場で最大のセグメントを占めており、中でもコンパクトSUV市場はその半数以上を占めている。そんな激戦区で奮闘する日産 キックスが2代目にフルモデルチェンジされた。

激戦区のコンパクトSUV市場に挑む「大人の“遊び心”を刺激するクルマ」

 日産のグローバルモデルであるキックスは、既に2024年からメキシコとブラジルで生産されており、日本仕様は少し遅れての登場となった。従来型はタイ製だったが、新型は日本製に。しかも、追浜工場で生産される最後のニューモデルとなる。そしてパワートレーンも海外仕様は2Lガソリンエンジンだが、日本仕様にはe-POWERを搭載した。

 商品コンセプトは「大人の“遊び心”を刺激するクルマ」。ポイントは、(1)力強くダイナミックなデザイン、(2)進化した第3世代e-POWERなどの先進技術、そして(3)向上した快適性や利便性が挙げられる。

 まずはデザイン。エクステリアは従来型から一新された。アメリカンフットボールのヘルメットから着想を得たというフロントマスクや、リアまわりの口の字型の黒いグラフィック、車幅いっぱいに配されたテールランプなどがSUVらしい存在感を強調して、なかなか力強い。見るからに走りも良さそうなスタイリングは年齢を問わず好まれそうで、個人的には悪くないなと感じた。

 サイズも従来型よりひとまわり大きくなった。現在、日本市場において日産のSUVは、このキックスとエクストレイルしかなく、しかもキックスのライバルはホンダ ヴェゼルとトヨタ カローラクロスと開発陣も公言していることからも、キックスのサイズアップは必然だったのだろう。とはいえ、全長は4.4m足らず、全幅も1.8mジャストというサイズは都会の狭い道でも扱いやすく、今回の試乗でも街中をキビキビと走ってくれた。

 インテリアは開放感があって視界も良く、SUVらしい走りの良さが楽しめそうだと思わせてくれる。ATセレクターは最近の日産車に共通の、インパネ下側に配されたボタン式。ここだけは好き嫌いの分かれるところだが、まずは走り出してみよう。

ワインディングロードで試してみたくなる「e-4ORCE」

 今回の試乗車は、X e-4ORCEとG(FF)。1.4Lの直3エンジンで発電した電気でモーターを駆動する、シリーズ式ハイブリッドの「e-POWER」はシステムを小型化するなど第3世代に進化した。そして「e-4ORCE」ではリアにもモーターを搭載し、モーターとブレーキを統合制御する電動駆動4輪制御技術だ。「X」と「G」は装備や衣装の違いで、Gが上級グレードとなる。

 今回は市街地や首都高速などを中心とした短時間の試乗だったが、そのパフォーマンスの一端を味わうことはできた。試乗順の関係で、まずはX e-4ORCEから。アクセルペダルを軽く踏み込めばスッと走り出し、街中を流している限りはエンジンがかかることも少ないので、極めて静かだ。その走りは、まさにEV感覚。加速時などで少しアクセルペダルを踏み込むと状況によってはエンジンがかかるが、音もショックも少ない。

 ワインディングロードを走る機会はなかったから、e-4ORCEの効果は分からないかなと思ったが、交差点の右左折などでも後輪が駆動して、また内輪ブレーキで左右のトルク配分も制御してくれることから、スムーズに曲がってくれる。その作動状況はメーターに表示されるのもいい。近いうちにワインディングロードに連れ出してみたい。そんな気持ちにさせてくれた。

 アクセルペダルの操作だけで完全停止までできる、いわゆる「ワンペダル」走行はできないが、エコ/スタンダード/スポーツとあるドライブモードでエコとスポーツでは回生ブレーキを強めにできる。ただし回生の強さを切り替えられるパドルは付いていない。個人的には、パドルのほうが操作しやすくて好きなのだが…。

FFの軽快な走りも悪くない。快適性や利便性も向上

 続いて、FFのG。上級グレードなのでシート地や内装の加飾が上質になったり、タイヤ&ホイールが19インチ(Xは17インチ)となるなどの違いはあるが、パワートレーンなどは共通だ。

 だがこちらはFFなので車両重量は80kgも軽く、走りっぷりはe-4ORCEより軽快。ちょっとした加速時などにスッと出るときはクルマの軽さを感じさせる。19インチという大径のタイヤ&ホイールを履いている割りには乗り心地は悪化してはいないが、街中などでの乗り味はやはり17インチに軍配が上がる。

 首都高速では先進運転支援システムの「プロパイロット」も試してみたが、ハンドルのスポーク部にあるスイッチは操作しやすく、先行車の追従や車線維持、そしてステアリングアシストなど、精度は高い。これが全グレードで標準装備されたのも高ポイント。こうした先進運転支援システムは、コストはかかるだろうが将来的には全車に標準化を義務づけて欲しいものだ。

 また、新型キックスのサイズアップには、ライバルより劣っていたリアシートやラゲッジルームのスペース拡大という狙いもあった。実際、リアシートはヘッド&フットスペースも十分なものとなり、ラゲッジルームはリアシート使用時でもFFは476L、e-4ORCEは400Lとなり、大人4人の小旅行にも十分に対応できるだろう。上級グレードにはリモコンオートバックドアも備わる。

 市街地ユース中心ならFFでも十分。走りを楽しむのが好きな人なら、e-4ORCEをチョイスしたいところだ。グレードによる差は快適装備が中心だから、予算と好みで選ぶといいだろう。

 多くのライバルが群雄割拠していたこともあり、ここのところ従来型キックスの注目度が下がっていたのは否めないところ。この新型なら、スタイリングでも装備でも、そしてもちろん走りでも、ライバルたちを凌駕できる可能性は高い。発売から約3週間で7000台を超える受注があるというのも、うなずけるところだ。
(報告:篠原 政明/写真:原 アキラ、ほか)


■ 日産 キックス X e-4ORCE 主要諸元

●全長×全幅×全高:4365×1800×1610mm
●ホイールベース:2655mm
●車両重量:1550kg
●エンジン:直3 DOHC+2モーター
●総排気量:1433cc
●最高出力:72kW(98ps)/6000rpm
●最大トルク:115Nm(11.7kgm)/6000rpm
●モーター最高出力:前105kW(143ps)/4800-10700rpm、後50kW(68ps)/3500-10000rpm
●モーター最大トルク:前315Nm(32.0kgm)/0−2000rpm、後140Nm(14.3kgm)/0-3300rpm
●トランスミッション:なし
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・45L
●WLTCモード燃費:21.5km/L
●タイヤサイズ:215/60R17
●車両価格(税込):359万9200円

最終更新:2026/07/18

 

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