BYD ラッコに試乗。
海外の自動車メーカー初の軽規格専用設計車の出来は?

ボディ剛性は高く、軽スーパーハイトワゴンとは思えないほど乗り味は良い。EVゆえに室内は静かで快適だ。

短いボンネットやほぼ垂直のテールゲートなど、シルエットは日本製ライバルとほとんど変わらない。

車幅いっぱいに伸びる水平基調のテールランプや、キックアップしたDピラーのデザインが特徴的だ。


メーターは7インチのディスプレイ。10.1インチのタッチスクリーンはスマートフォンとリンク可能。

ラッコ300プレミアムのシート地は合成皮革。運転席は6ウエイ電動アジャストで、前席はヒーター内蔵。

リアシートはスライド可能で、写真はいちばん後ろに下げた状態。シートアレンジは多彩で使い勝手は高い。


※画像クリックで拡大表示します。

 2025年のジャパンモビリティショーで参考出品され、その登場が注目されていたBYDの軽乗用EV「ラッコ(RACCO)」。満を持して2026年7月28日に発売され、翌週には早くもメディアに向けての試乗会が開催された。まずは試乗会でのファーストインプレッションを紹介しておこう。

日本の軽自動車規格専用に設計された「RACCO」

 ラッコは、BYDだけでなく海外の自動車メーカーとしては初めて、日本の「軽」規格専用にシャシ、ボディ、駆動・制御システムなどを新設計された、現段階では「日本専用」モデルだ。ちなみに「ラッコ」という車名は、ドルフィンやシーライオンなどと同様にBYDの海洋生物シリーズのひとつとして付けられたが、「RAKKO」ではなく「RACCO」としたのは「K」はカドのある文字なので丸みのある「C」のほうがイメージが良いからだという。

 そのスタイルは、いわゆる「スーパーハイトワゴン」で、リアサイドにはスライドドア(しかも両側とも電動)を備える。フロントまわりは丸みのある造形で、サイドビューには水平基調のキャラクターラインを与え、リアは車幅いっぱいに伸びるテールランプなど、ディテールはシンプルだが特徴的だ。シルエット的には、日本の軽スーパーハイトワゴンと大きくは変わらない。奇をてらったデザインにしなかったのは、使い勝手や安全性を追求した結果であるという。

 その考え方は、インテリアにも反映されている。ドア内張りからダッシュボードはつながった水平基調で展開し、エアコンの吹き出し口やスイッチパネル、ドアオープナーなどは丸みを帯びた柔らかな造形で構成されている。ATセレクターはエアコン系スイッチに隣接したインパネシフトで、形状は独特だがハンドルから近くタッチもしっかりしているので操作しやすい。

 リアシートは左右セパレートで前後スライドし、シートバックを倒せば座面がダイブダウンしてラゲッジルームはほぼフラット&スクエアになり、また座面はチップアップもするので背の高い物も積載可能となるなど、スーパーハイトワゴンとしての使い勝手の高さは、日本製ライバルたちをよく研究しているようだ。

軽自動車としては重いから、加速は鋭くはないが…

 外観をひととおり眺め、90°近く開くフロントドアを開けて室内に乗り込み、操作系のちょっとしたレクチャーを受けてから走り出す。

 ラッコは電気モーターで前輪を駆動するFWDだ。バッテリーを車体構造の一部として組み込んだ「C to B(セル to ボディ)」技術に、電子制御ユニットや各種コントロールユニットなどをバッテリーユニット内に高度に統合する「Xパック」を採用するなど、ラッコ専用のテクノロジーを導入している。

 モーターの最高出力は軽自動車の自主規制値である47kW(64ps)で、最大トルクは160Nmを発生。駆動用バッテリーの総電力量は22.40kWhと35.84kWhが用意されるが、今回の試乗車はトップグレードの「300プレミアム」なので後者を搭載。WLTCモードの一充電航続距離は、前者が210km、後者が320kmとなっている。

 そもそも床下に駆動用バッテリーを敷き詰める電気自動車は同クラスのエンジン車に比べて車両重量は重くなる。さらにスーパーハイトワゴンというボディ形状で、両側電動スライドドアや運転席パワーシートをはじめADAS(先進運転支援システム)なども標準装備したラッコ 300プレミアムの車両重量は1230kgと、軽自動車としてはけっこう重い。エントリーグレードで装備を多少簡略化したラッコ 200でも1160kgある。

 したがって、電気自動車によくある「カタパルトから発射された」ような加速を見せることはない。それでも、アクセルペダルをジワッと踏めばスムーズに発進し、そこから踏み込んでいけば軽ターボ車か、それ以上の加速を見せる。もちろん軽ターボ車のようなエンジンサウンドを上げることはなく、きわめて静かに、そして素早く加速する。

 今回は郊外路で短時間の試乗だったが、もっとも気になったのは「SAILUN」というタイヤのノイズと乗り味だろうか。これを日本製のちょっといいタイヤに履き替えただけで、かなり印象はアップしそうだ。また、前述の「C to B」技術の恩恵かボディ剛性は高く、そのしっかり感は軽スーパーハイトワゴンとは思えないほど。

 回生ブレーキの強弱はセンターダッシュにスイッチがあるが、切り替えても効きは大きくは変わらない。これは、今までのBYD車と似た感覚だ。今回はハンドリング云々を語れるような道は走ってはいないが、ハンドルの操作力は少し重めの設定。個人的にはしっかりした感じで嫌いではないが、女性ユーザーには少し重いと感じられるかもしれない。


発売2週間で累計受注は1000台を突破

 インターフェースの操作性や視認性に関しては、だいたい問題なかったのだが、気になったのはハンドルのスポーク部に備わるオーディオやADASのリモコンスイッチ。これが金属調の地に白字なのでかなり見にくい。自分のクルマになればブラインド操作も可能だろうが、金属調を使いたければワクだけにして、スイッチ類は黒地に白字のほうが見やすく操作もしやすい。

 インテリアは日本製ライバルのような上質感はないが、欧州のベーシックモデル的なチープシックな雰囲気は悪くない。それでも、保温機能付きのカップホルダーや後席の傘収納ストラップ、そして前席まわりの豊富な収納など、ライバルをよく研究している。

 グレードと車両価格は、ラッコ200が214万5000円、ラッコ300プラスが239万8000円、今回試乗したラッコ300プレミアムが249万7000円。CEV(クリーンエネルギー自動車導入促進)補助金は、全グレード共通で15万円となっている。BYDジャパンとしては、まず販売開始から年内に受注ベースで1万台を目指している。初期受注は好調で、発売2週間で早くも累計受注は1000台を突破したという。

 だが、年産1万台では、このラッコの開発費をペイすることは不可能だろう。日本においては、4WDやライバルがラインナップする「カスタム」系を追加するというのもありかもしれない。欧州ではスーパーハイトワゴンのようなスタイルのクルマやスライドドアの要求は低いから、まずは東南アジア諸国への輸出から、そしてXパックを活用したAセグメントのコンパクトEVの開発などは考えられる。

 ラッコの記事に関しては、出来が良いとはいえ「中国製」ということで実際に見てもいない一般オーディエンス(と思われる)からの賛否両論は多い。個人の意見はそれぞれだから、スルーするのもかまわない。少しでも気になるというなら、まずは自分の目で見て、触って、できれば試乗してみる。ラッコについての個人的な評価は、それからでも遅くはないだろう。
(報告:篠原 政明/写真:MazKen、ほか)


■ BYD ラッコ 300プレミアム 主要諸元

●全長×全幅×全高:3395×1475×1800mm
●ホイールベース:2520mm
●車両重量:1230kg
●モーター:交流同期電動機
●最高出力:47kW(64ps)
●最大トルク:160Nm
●バッテリー総電力量:35.84kWh
●WLTCモード航続距離:320km
●駆動方式:FWD
●タイヤサイズ:165/65R15
●車両価格(税込):249万7000円

最終更新:2026/08/13

 

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