日産 エルグランド

満を持して登場した日産 新型エルグランドは、
ラージサイズ ミニバン市場の活性化を図る

アクセルペダルを静かに踏み込んでいくと、2.4トンを超える車重を感じさせずに、滑らかに、しかも力強く加速する。

試乗車はトップグレードのG e-4ORCE。ボディカラーは、特別塗装色のフジドーン/至極(しごく)プレミアム2トーン。

従来型より30mm長く、45mm幅広く、160mm高くなったが、ホイールベースは同じ。逆スラントのDピラーもユニーク。


2つのディスプレイが展開するインパネは水平基調で低く、視界は良い。インテリアカラーは、銀雪-ギンセツ-。

1列目シートは電動アジャストで、ヒーター&ベンチレーション付き。助手席にはオットマンも備わる。

2列目は50cmの幅広座面に電動デュアルリクライニング機構なども備えた「特等席」。ヒーター&ベンチレーションも備わる。


※画像クリックで拡大表示します。

 2026年7月に発表された日産のフラッグシップ ミニバン、エルグランドの販売は好調のようだ。ようやく公道で試乗する機会を得たので、実車を見て、触って、乗っての印象を報告しておこう。

サイズアップで外観は迫力を増し、室内は広くなった

 全長は約5m、全幅も1.9m近い新型エルグランドを公道上であらためて見ると、その佇まいはなかなかの迫力モノだ。とくに従来型より160mm高められた車高が、存在感を文字どおり高めている。ユニークな「組子」のフロントグリルは好き嫌いが分かれそうだが、メッキ類を使っていないので「オラオラ」なイメージはなく、まさに威風堂々という感じ。個人的には嫌いではない。はたして今後の日産車は、このグリルをアイデンティティにするのだろうか。

 運転席に乗り込むと、従来型から76mm高められたアイポイントと水平基調のインパネのおかげで視界は良い。今回の試乗では狭い街中を走る機会はなかったが、車両感覚はつかみやすいので運転はしやすそうだ。14.3インチ×2の大型統合インターフェースディスプレイが展開するインパネは視認性が高い。表示はハンドルの左右スポークのスイッチで操作でき、このあたりはこれまでの日産車とあまり変わらないので、操作性は悪くない。

 ATセレクターは、最近の日産車(だけではないが)に共通のプッシュボタンがダッシュボード下側に備わる。運転中に操作することは少ないがブラインドでは扱い難いので、個人的にはあまり好きではない。

 シートレイアウトは、2-2-3の3列7人乗りのみ。従来型よりサイズアップしたので室内は広く、後方ほど座面が高いシアターポジションと大きい窓のおかげで、後ろの席でも見晴らしがいい。試乗車はトップグレードのGで、1-2列目は電動アジャストでヒーター&ベンチレーション付き。助手席と2列目はオットマン付き。2列目のキャプテンシートは座面幅も広く電動デュアルリクライニング機構なども備え、このクルマの特等席だ。3列目は3人掛けだが、中央は少し座りにくく、2人掛けならスペース的にも問題はない。

ハイブリッドに4輪制御、電子制御サスも採用

 そろそろ走り出そう。パワートレーンは、140psと228Nmを発生する1.5Lの直3 ターボエンジンで発電し、モーターで駆動する日産得意のシリーズハイブリッド「e-POWER(パワー)」だ。しかも駆動は前輪だけではなく、リアにもモーターを搭載して後輪も駆動する電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE(フォース)」を採用している。

 そのため、大トルクのモーターが発進時から素早い加速を見せ、アクセルペダルを静かに踏み込んでいくと2.4トンを超える巨体が瞬時にスーッと滑らかに、しかも力強く加速する。少し前が空いた道で意図的にアクセルペダルを踏み込んでみたら、ラージ サイズのミニバンとは思えない加速を見せた。

 このe-4ORCEは前後トルク配分を制御して加速時にはテールの沈み込みを減らし、停車時にはスムースストップ機能が最適なブレーキ力を制御して、いわゆる「カックンブレーキ」にはならない。走行中の姿勢は安定しており、これはクルマ酔いしやすいパッセンジャーにはありがたいだろう。

 そしてe-POWERとe-4ORCEに加え「インテリジェント ダイナミック サスペンション」も採用した。これは電子制御ショックアブソーバーで、小さな段差は減衰力を低めて滑らかに乗り越え、大きなうねりは減衰力を高めて車両の揺れをおさえる。今回の試乗では不整路面を走ることはなかったが、郊外路でも高速道路でも振動や上下動はおさえられ、快適な乗り心地を味わえた。

 また、新世代アクティブノイズコントロールに高性能遮音ガラスや吸音材・遮音材の採用で、車内の静粛性はかなり高い。今回は真夏の試乗で、乗り出したときはエアコンが全開で作動して吹き出し音が気になったが、試しにエアコンを切ると車内は静寂に包まれるほど。タイヤなどのロードノイズもおさえられ、プレミアムミニバンらしい静粛性が保たれている。

ミニバンとは思えないようなコーナリング性能も発揮

 そして驚くべきはコーナリング性能。ハンドル操作に応じて後輪の駆動力配分を上げて前輪のコーナリングフォースを高め、コーナリング中にアクセルを踏み込めば後輪の配分をさらに上げてクルマを進みたい方向に向け、さらに踏み込めば内輪ブレーキをかけてモーター出力を上げ、ヨーモーメントを出すことで狙ったラインをトレースできる。

 しかも、コーナリング中はインテリジェント ダイナミック サスペンションが外側の減衰力を高めて横方向の動きを抑えてロールは少ない。クルマの向きと姿勢を自在にコントロールした高い旋回性能を少しだけ試してみたが、その感覚はまさにコーナリングマシン! これを、背の高い大きなミニバンで達成したことは驚異的だ。

 安全&快適装備は、フラッグシップ ミニバンらしく高いレベルで充実している。とくにADASでは、試乗車はオプションのプロパイロット2.0を装着しており、同一車線内のハンズオフ走行や車線変更支援などを高精度でアシストしてくれる。購入を検討しているなら、ぜひとも装着をおすすめする。

 グレードはGとXのみだが、日産モータースポーツ&カスタマイズが手がける「オーテック」や「VIP」zなどもラインナップされており、また純正アクセサリーも内外装ともに豊富に設定されているから、自分だけのエルグランドを作り上げることも可能だ。

 諸般の事情で16年間モデルチェンジされなかったことで、ラージサイズ ミニバンの市場はパイオニアのエルグランドから後発のアルファード/ヴェルファイアに主導権は移っていた。満を持して登場した新型エルグランドの完成度は高い。販売も好調のようだから、この市場を活性化させていくことは間違いないだろう。
(報告:篠原 政明/写真:原 アキラ、ほか)


■ 日産 エルグランド G e-4ORCE 主要諸元

●全長×全幅×全高:4995×1895×1975mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2440kg
●エンジン:直3 DOHCターボ+2モーター
●総排気量:1498cc
●最高出力:103kW(140ps)/5000rpm
●最大トルク:228Nm(23.2kgm)/3600rpm
●モーター最高出力:前151kW(205ps)/4400-8500rpm、後100kW(136ps)/5500-10900rpm
●モーター最大トルク:330Nm(33.7kgm)/0−4300rpm、後195Nm(19.9kgm)/0-3000rpm
●トランスミッション:なし
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・67L
●WLTCモード燃費:16.8km/L
●タイヤサイズ:235/60R18
●車両価格(税込):757万9000円

最終更新:2026/09/29

 

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