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ヒョンデ モビリティ ジャパン(HMJ)は次世代水素電気SUV「ネッソ」をフルモデルチェンジさせて2025年のジャパンモビリティショーで日本初公開し、翌2026年4月から販売を開始した。今回、短時間だが試乗する機会を得たので、そのショートインプレッションを紹介しておこう。
ネッソの初代は2018年に発表され、HMJが日本再参入を果たした2022年に日本にも導入された。HMJでは「水素電気自動車」と謳っているが、水素を燃料に燃料電池が空気中の酸素を結合させて発電し、その電力でモーターを駆動して走る電動車、いわゆる「燃料電池電気自動車(FCEV)」だ。
2代目となったネッソのスタイルは先代から一新。「アート of スティール」というデザイン思想のもと、素材が本来持つ特性を引き出す重厚なシルエットや、強さと美しさを併せ持つ個性をカタチにした。カテゴリー的には4.7mを超える全長と1.9m近い全幅のラージサイズ SUVとなる。ヒョンデ モーター グループの水素事業ブランド「HTWO」を象徴する「田」型のシンボルをモチーフにしたデザイン要素をフロントのデイタイムランプやテールランプなどに採用したり、三角形のリアクオーターウインドーなど、ディテールはユニークだ。
オートフラッシュ ドアハンドルを引いて乗り込むと、12.3インチのパノラミック カーブドディスプレイが目を引く。ラージサイズゆえ室内スペースはゆったりしており、前席は駐車中などにくつろげるリラクゼーション コンフォートシート(レッグレスト付き)、後席もリクライニング機構が備わりフラットなフロアも相まって快適。ラゲッジルームも後席使用時で510L、シートバックを全倒すれば最大1630Lと広大だ。
全体的な印象は静かで穏やか。乗り心地も快適。
日本仕様のネッソは、ボヤージュ(750万円)、ラウンジ(820万円)、ラウンジ+(835万円)の3グレード。いずれもパワートレーンは共通で、150kW(204ps)と350Nmを発生するモーターで前輪を駆動する。一充填走行距離は車両重量の関係などで参考値だがボヤージュは1014km、それ以外は970kmとされている。
今回の試乗車はトップグレードのラウンジ+。ヒョンデ スマートセンスと呼ばれるADAS(運転支援支援システム)をはじめ、本革シートやプレミアムサウンドシステムなどの快適装備はラウンジと共通だが、デジタルサイドミラーも装備する。
ステアリングコラム右のレバーにON/OFFスイッチと捻ってシフトするATセレクターが一体化されており、これは思ったより扱いやすかった。2トン近い車両重量もあり、発進加速はハイパワーBEVのような鋭い出足を見せることはないが、いたってスムーズ。しかも静かで、もちろんアクセルペダルを踏み込んでいけば予想以上の加速を発揮する。
そのサイズゆえ市街地走行での取り回しが気になったが、ドライビングポジションは少し高めで水平基調のインパネによる視界は良く、サイズがつかみやすいのでけっこう運転しやすい。最近の日本車では見かけなくなったデジタルサイドミラーは後側方を確認するとき、つい窓の外の「棒」を見てしまうが、慣れればインパネ両端のモニターは見やすいし、夜間や荒天時は効果を発揮しそうだ。
今回は市街地での短時間走行だったので、高速道路やワインディングロードなどは試していない。それでも市街地走行レベルでは乗り心地は良く、静かな電動車ゆえタイヤのロードノイズが気になるところだが、それも比較的おさえられている。ハンドリングも市街地レベルでは穏やかで素直に応答する。
今後の課題は、車両価格と水素のインフラだろう
レーダーとナビゲーション情報から前走車との距離に応じて回生量を自動調整する「スマート回生システム」や、最大1500Wの電力供給が可能なV2L機能などを試す時間はなかったが、いずれ機会があれば長距離ツーリングもしてみたいところだ。
電動車の新たなフェーズとして一時は注目されていたFCEVだが、現在はヒョンデのほかにはトヨタとホンダくらいしか生産・販売していない。今後、FCEVを普及させるための問題点は、車両価格と水素充填のインフラだろう。CEV補助金は147万円とされているが、ラージサイズのインポートSUVとはいえ800万円前後という車両価格はけっこうな金額。メーカー間のアライアンスなどで量産効果を高めての車両価格引き下げも検討されているが、まだまだ時間はかかりそうだ。
約1000kmという航続距離は、ほとんどのBEVよりは長く、エンジン車やHEVにも匹敵する数値だが、なんといっても水素ステーションの数は全国的に不足している。もちろん、市販されているFCEVの台数とのバランスもあるから、なかなか難しいところなのだろう。政府は2030年までに全国で約150カ所の水素ステーションを1000基規模にするという目標を掲げている。また、水素そのものの価格も引き下げていかなければならない。
さまざまな問題が山積しているFCEVだが、「ファーストペンギン」を目指すなら、このネッソに乗ってみる価値はある。FCEVとはどんなものなのか、BEVとはどう違うのか、そのあたりはぜひ実際に試乗して体感してみて欲しい。
(報告/写真:篠原 政明)
■ ヒョンデ ネッソ ラウンジ+ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4750×1865×1690mm
●ホイールベース:2790mm
●車両重量:1970kg
●モーター:交流同期電動機
●最高出力:150kW(204ps)/4200-5000rpm
●最大トルク:350Nm/0−4000rpm
●燃料・タンク容量:水素・54L×3
●WLTCモード航続距離:970km(参考値)
●駆動方式:FWD
●タイヤサイズ:245/45R19
●車両価格(税込):835万円






