RJCの研究活動の一環として、勉強会をオンラインで5月13日に開催した。今年初めて独自の超小型モビリティ「AIM EVM」を市販化したエイム株式会社に、その開発経緯や、認定取得過程、事業展開について、講義していただいた。EVM事業部 兼 マーケティング部の岩田智行氏に、解説いただいた。

(AIM EVM)
●会社の紹介
エイム株式会社は、1998年に創業し、自動車メーカー各社・サプライヤーをはじめとするクライアントに、エンジニアリングサービス事業を展開している。設計業務の委託が多いという。そのいっぽう、2000年代後半には自社オリジナルエンジン搭載のマシンで、ルマン24時間レース参戦に挑戦。ルマンは、2008年に参戦を開始し、2010年に総合4位(ガソリンエンジン車1位)という、すばらしい結果を残した。元ホンダ、無限、ジャッドでレース用エンジン設計に携わった金田博行氏が、当時エイムの顧問の任にあって、エンジン開発を指揮した。名門オレカ製のシャシーに搭載された。

その後、電動化技術に挑戦し、EV用軽量高性能モーターを開発しながら、EVスポーツカーの「EV SPORT 01」を開発。こういったチャレンジの背景には、金田氏のほかにもレース業界の有力者がいた。なかでも元ホンダで第2期F1を率いた桜井淑敏氏は、2008年にエイムの最高顧問に就任、2012年から21年まで取締役会長として、ルマン挑戦、EVスポーツカー製作の開発を推進した。レース界とのつながりは、代表取締役社長の鈴木幸典氏の情熱から生まれたという。
(EV SPORT 01)
●AIM EVMの開発のきっかけ・コンセプト
「EV SPORT 01」は市販化のハードルが高く、検討の結果、超小型モビリティのEVを開発することになった。ちなみに「EV SPORT 01」は、アルミフレームシャシーでリアにモーター2基を搭載。そのモーター(APM200)は、英国のメーカーと共同開発したもの。車両の最大出力は360kW /740Nmとなっている。
小型EVは、会社に縁のあった沖縄県の久米島に貢献できるクルマだった。ガソリンスタンドが少なく値段も高い、道が狭い、などの、離島の事情にマッチしていた。そして法的規格としては、2名が乗れて、最高速は60km/hあれば十分など、求めるものに必要十分なのが「超小型モビリティ」規格だった。

小さくても、いわゆる安ものではなく、高品質で、笑顔になれる楽しめるクルマ、ということにこだわった。リサーチをして、超小型EVにありながちな弱点に対処し、「荷室を確保、クーラー、ヒーター、ウィンドウを装備、一充電100km以上、2人乗り」などを想定した。久米島では、EVミニカーのホテルなどですでに使われていたが、坂が登れない、充電距離短く不安など、の声があったので、そこも対処。また台風などで停電が多く、冷蔵庫も使えなくなることもあるので、外部給電機能をつけることにした。
販売は、まずはB to Cでなく、B to Bで市町村用の公用車、さらにレンタカー、シェアカーに、と想定された。
(2023年JMSでの展示)
●AIM EVMの概要
離島などには充電設備もあまりないので、普通充電のみ。
坂道発進は14度での発進が可能で、モーター出力を高めに設定。例えばトヨタのC+podが定格出力2.6kW/最高出力9.2KWなのに対し、7.5kW/14kWを確保した。

シャシーはコストも考慮して、スチールの角パイプフレームを採用。衝突安全性は配慮。
サスペンションは前後ストラットで、とくにリアのストラットはこのクラスでは稀有。乗り心地とハンドリングを重視した。
ボディ・シャシーはリアルでの衝突実験はしないが、シミュレーションで徹底的に行った。極悪路耐久試験など長距離の走行試験は海外で行った。
安全性能は当然軽視せず、ABSなどは装備。内装は楽しさを重視し、パワーウィンドウを装備。暑い気候もあるので、バッテリー電力を食うことにはなるが、エアコンは装備した。
●開発経緯とこだわり
開発体制は、デザインダイレクター(デザインとパッケージング)は、元日産で、現SNDP代表の中村史郎氏。開発ダイレクター(車両性能とくにシャシー)は、元トヨタC-HR開発責任者の古場博之氏。製造・品質ダイレクター(品質管理)は、元ホンダのアコード開発責任者の一尾智史氏。大手メーカーの商品開発要職にあった技術者が開発を主導することで、開発工程は、まさに自動車メーカーの開発と同じくらい本格的なものになった印象である。
生産はいわゆるファブレスで、委託先は中国。最近の万博の中国製造EVバスの問題などもあって、一般からは不安視されることも多いそうだが、品質管理は非常にこだわっている。中国でも技術のしっかりしたところをセレクト。設計は全てAIMで行ない、現地指導も相当やったとのこと。
バッテリーは当初は交換式も考え、実用化されているホンダのGachaco、香港のGogoroも検討したが、交換式電池を6個や8個も搭載して、本当にユーザーが充電のたびにそれを交換できるのかという問題もあり、断念したという。
パッケージングとしては、片側逆開きドアや、左右シートを前後にずらすなども試みたが、結局ふつうの形に落ち着いた。電池は、LFP電池をフロア下に搭載することになった。
荷室は、機内持ち込み可能スーツケース3個搭載可能となっている。
デザインは、当初は都会的なモダンなものだったが、沖縄のシーサーをインスピレーションにした丸型二灯のデザインを採用した。開発工程では、多数のモックアップを製作。パッケージングも追求。カラーパネルを現地に運び、日差し、青い海、白い砂浜で、確認した。車体色は3色で、オレンジは沖縄の赤瓦、青は海、白は砂浜のイメージ。

e-axleは、合うスペックのモーターが中国製ものであったので、品質試験もして採用。
設計図面は、まずデータで検証後、開発計画書に落とし込みなどし、つくっていった。各項目の要件を考慮したが、とくに法規と安全性は重要視した。
超小型モビリティの法規では、車両の試験は必要なくても書面の審査はあるので、各部の保安基準適合を満たしているかの確認は、多大な時間とリソースをかけた。地方運輸局や軽自動車協会に、適宜問い合わせた。
CAEを用いて、机上(データ上)であらゆる性能を確認した。
各種試験は海外の試験設備で実施。中国はテストコースやNVH試験などの設備が、数の点でも広さの点でも充実しているという。要所要所で現場で立ち会い、徹底的にこだわり、乗って楽しいハンドリングも追求した。
品質管理は、中国での経験もある元ホンダの一尾氏に担当してもらった。製造準備、製造工程も指示書作成などをした。中国事業者は、日本と違ってしっかり指示しないと適当になるが、ちゃんと指示すると、ちゃんとやってくれるという。
中国では最初は適当だったのを、溶接の指導までしてしっかりしたものにした。寸法の誤差も、基準を決めて対応した。試験でも、生産工場でも、何度も現地に行って指導したが、中国も根気強くやってくれた。
(製造・品質ディレクターの一尾氏。中国・徐州の生産ラインで。)
●超小型モビリティの認可の困難さ
国交省の規格では、超小型モビリティの「型式指定車」は量産車扱いであるが、自動車メーカーでないと対処できないような規定なので、中小企業の場合は、実証実験扱いの「認定車」とせざるをえないという。
「型式指定」だと、保安適合性確認の試験が必要で、超小型モビリティの場合でも、速度が40km/h以下でよいという緩和しかない。衝突試験などはコストが数億から数十億かかるので、中小企業には非現実的。
「認定車」だと認定を取得した自治体でしか運行できず、自治体ごとに認定を取得、つまり1台ごとに車検することになる。
つまり実質的に、超小型モビリティは「実証実験」の規格でしかない。「型式指定車」は難易度が高いので、自動車メーカーも実証実験の「認定車」にとどまっている。今まで「型式指定」を取得したのはトヨタのC+podしかないとのこと。
「認定車」のメリットは、安全基準が緩和されること。いっぽうで、制約条件としては、高速を走行しないことのほか、指定地域、使用者への講習実地、使用者の特定と管理が必要。
「認定車」の取得の行程は、地方公共団体や協議会、自治体ごとに調整・協力を得て、まず申請者として承認を得る。
次に地方運輸局への認定申請書、書類製作。一発ではとおらないので、担当者と数十回以上、時間をかけて検証し、直していったという。車両構造、運行の体制などについて。
そのいっぽうで、軽自動車検査協会へ、並行輸入車として届出をする。「認定車」の場合1台ごとに必要で、各地方の協会ごとに進める。
とにかく大変で、久米島で取得するのに約半年かかった。ただ、繰り返しやっていけば、認めてもらえる。沖縄県は22市町村までは個別にとっていたが、そこまでやるならと、県全域でと沖縄県として了承された。その他、福岡県(北九州市、学研都市周辺)、東京都-大島町でも取得した。
CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)は、「ミニカー」と「型式指定車」には出るが、「認定車」にはない。実証実験目的だからということのようだが、これは非常に不利になるので、再考を各団体などに陳情しているが、まだ実現していない。
●事業展開
初出荷は26年1月に、沖縄県国頭村で観光協会が3台を納車。道の駅のレンタカーとして。
その後、北九州学術研究都市から声がけされて、ラストワンマイル移動、カーシェアリングの実証実験として4月に始めた。
今後にむけて、拡張化を考えており、機能としてはV2X、V2Hなどの活用があり、シェアカーとしては、充電関連や認証・決済システムなどが重要になる。実証実験も生かしながら開発する。
サービスとしてはラストワンマイル配送、移動診療、構内移動など。業務に合わせた内装設計、機能などのカスタマイズを提案していきたいという。
(量産されたAIM EVM)

(沖縄県国頭村観光協会に納車された車両。ナンバーをつけている。)
(北九州学術研究都市での実証実験)
●質疑応答
Q・(バッテリーはリン酸鉄リチウムイオンだそうだが、充電での劣化などについてはどうか?)
バッテリーは専用開発のものではなく、軽自動車サイズの量産車両で使われているものを採用した。既に市場に出ている電池ということで選んだ。そこで問題発生すればすぐ対策されるはず。また、EVMは急速でなく普通充電なので、電池の劣化に対しては大丈夫と考えている。
200Vで5時間という仕様だが、一般的な家庭の100Vでも充電できる。10時間以上はかかってしまうが、100Vで充電しているユーザーもある。200Vを推奨はしている。200V用と100V用ソケットは標準で両方セットしてある。
Q・(5月時点での販売台数について、また、個人ユーザーでも買えるのかどうか?)
うるま市役所に1台、久米島町役場1台、沖縄科学技術大学院大学で、構内のシェアリング実証で3台入れたところ。
個人ユーザーについての問い合わせはあるが、まだ(BtoCで必要になる)販売やサポートサービスのネットワークづくりがやりきれていない。
今は自治体で運営しながら、地域の提携修理会社さんのアフターサポートを整備しながら、それが整ってきたら、個人ユーザーにも、と考えている。
Q・(モーターは超小型用のものを自社開発する予定はないのか?)
当然やりたいが今はまだできていない。「EV SPORT 01」のAPM200型モーターはかなり高出力で、海外では現在バスに採用されている。海外の協力会社で生産しており、その生産体制のリソースも、現状は余裕がない。
Q・(全長が「型式指定」の枠に収まっているのはどうしてか?)
「認定」の規定は3.4mで軽自動車と同じだが、もともと「型式指定」を考えていたので、その枠の2.5m以下に収まる2.485mとした。
今は認可の緩和がないかぎり、「型式指定」はあきらめている。
Q・(販売価格はいくらぐらいか?)
車両価格は190万円に設定している。補助金は、たとえば沖縄県で20万、久米島町で15万、などと足していけるので、実質120〜130万になると想定していたが、CEV補助金が出ないので、ちょっときびしい。ただ国のほうで出さなくても、自治体では、出そうかという雰囲気に最近なってきている。そうすると160〜170万くらいの負担額になるのではないかと期待している。
●参加しての感想
今回の勉強会担当者は、2023年JMSの展示で、「EVM」の前身の試作車と「EV SPORT 01」の2台を見て、仕上がりのクオリティが高いのが印象的だった。その後、会社としてルマン参戦で成果を上げていることを知って感銘を受けた。今回の講義で、「EVM」が本格的に開発されているのがよくわかり、クオリティの高さに納得した。また、「超小型モビリティ」の市販化には、大きなハードルがあるということで、「超小型モビリティ」がなかなか普及していないわけもわかった。普及には、各種のミニカーが一定数普及しているヨーロッパのように、免許制度から変わる必要もあるかもしれないが、ニーズはあるはずなので、残念に思う。果敢に挑戦し、市販化に結びつけて、意欲的に展開を進めているエイムの、今後の躍進に期待したい。
報告:武田 隆
写真・図:エイム株式会社/武田 隆




